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未来を創る 宇宙ビジネスの旗手たち

SPECIAL/特集記事

第40回

衛星製造からデータ提供まで、
Planetの衛星コンステレーションが目指す未来
Planet Steve Jenks

End to End サービスを提供するリーディングカンパニーであるPlanetは、毎日世界中に衛星データと地理空間ソリューションを提供している。Planetはどのようにして大規模なコンステレーションの構築と幅広い顧客へのデータ提供を行っているのか、今までの歩みと将来像に関して同社の日本・インド地区リージョナルセールスダイレクターを務めるSteve Jenks氏にお話を伺った。

ガレージから世界最大のリモートセンシング衛星コンステレーションへ
米国サンフランシスコに本社を構えるPlanetはNASAの科学者であったWill Marshall氏、Robbie Schingler氏、Chris Boshuizen氏によって2010年に設立された。設立当時の人工衛星市場は大型衛星が占めており、費用やデータアクセス手段の難しさ等、民間利用からは程遠いものであった。小さなガレージにおける衛星製造から始まったPlanetは、世界最大のリモートセンシング衛星コンステレーション企業へと成長し、軌道上の約200基の衛星とともに世界規模の課題解決に貢献している。
Planetの保有する衛星(Planet提供)

Planetの保有する衛星(Planet提供)

Planetは現在2種類の衛星コンステレーションを保有している。1つ目のコンステレーションはDoveである。180基を軌道上で運用しているDoveは3m程度の解像度で毎日地球上の陸地をくまなく観測している。Dove衛星の寿命は3年程度であり、Planetは毎年新しい機体を打ち上げ、寿命を迎えた機体を引退させている。これはアジャイル開発(PlanetではAgile aerospaceと呼ぶ)の考え方に則るもので、衛星単体ですべてをカバーしようとするのではなく、毎年、最新の技術を搭載した新しい衛星を開発しては打ち上げるというサイクルを繰り返すことで常にコンステレーションを最適な状態に保ち、全世界をカバーし続けることができるのだ。
Planetの2つ目のコンステレーションはSkySatである。現在21基が運用されているSkySatは50cm程度という非常に高い解像度を持ち、オンデマンドでより迅速に観測データを取得することができる。
本年、PlanetはDoveとSkySatに続く2つの衛星コンステレーション計画を発表した。2023年には超高解像度衛星Pelicanの打ち上げを開始するとともに、400以上の波長のデータを取得できるハイパースペクトルセンサを搭載したTanagerの打ち上げも予定している。
Planetは今まで以上にサービスの高度化を指向し続けている。

Planetが提供する価値
Planetの衛星コンステレーションの特徴は網羅性と適時性、そして競争的な価格設定にある。PlanetはTip and Cue(衛星の選択と集中)の考え方をもとに、保有する衛星の使い分けを行っている。Doveを活用した24時間365日に及ぶ観測データをもとに地表の日々の状況変化を明らかにする。衛星の適切な活用によって、必要な情報を必要なタイミングで入手することが可能となるのだ。

また、Planetはハードウェアからソフトウェアまで End to End のサービスを提供している。サンフランシスコの本社で製造される小型衛星は、かつてNASAで使用していた大型衛星とは比べ物にならない安価なコストで作られる。他の衛星データ提供サービスのように衛星製造、ソフトウェアの製造、コントロールシステムをそれぞれ異なる企業が担うのではなく、製造からデータ提供まで自社で一貫して行うことで、より良いサービスを、安価な価格で提供できるのだ。

“Space is Hard.”とSteve氏は言う。ひとたび宇宙空間に投入された衛星は、なかなか思うように動かせない。Planetは競合他社を凌駕する衛星基数と取得データ数を誇るだけでなく、何よりも、衛星に特化した深い知見を保有する数少ない企業の一つだ。Planetの提供する巨大なコンステレーションを生かした価値は他には真似できないであろう。

衛星データの民主化と新たな課題
冒頭に述べた通り、衛星製造や衛星データの利用はつい十年程前は政府利用がほとんどであり、民間企業や個人が利用するには様々なハードルがあった。そこでPlanetは『データの民主化(Democratization of Data)』を掲げ、超小型衛星を大量に打ち上げることで、衛星データの提供価格を下げ、様々な人が衛星データにアクセスできるように整えてきた。Data as a Service の企業として、大量に衛星データを蓄積してきたPlanetをはじめ衛星データ提供企業が抱える新しい問題は「データがありすぎる」ということである。衛星データ業界の次の課題は「この多様なデータをどのように処理するか」ということである。衛星データの活用にAIをはじめとした機械学習を取り入れる企業は日本でも登場している。データ処理がより高度化し、多様な分析結果を提供できるようになることで、衛星データと民間企業の距離がより一層近づき幅広い用途での利活用が進むだろう。

衛星データの利活用へ一歩踏み出す
Planetの衛星データ提供範囲が拡大するにつれサービス利用者は増加した。クライアントは政府、NPO法人、民間企業、一次産業従事者等様々な業種に及び、その利用目的も多岐にわたる。
これから衛星データの利活用に踏み出したいが、どのように使えばよいか分からないという利用者に対して、Steve氏からアドバイスをいただいた。「衛星データの利活用方法がわからないときは既存のユースケースを軸に考えるとよい。既存のユースケースには何らかの解決方法のアイデアがあるはずだ。そのアイデアに対して衛星データを活用するアプローチを検討してみてほしい。」

Planet Steve Jenks氏

Planet Steve Jenks氏

衛星データとしばしば比較されるものとして、航空機やドローンから取得したデータがある。例えば、森林を飛行機やドローンで空撮して違法伐採や管理状況を確認する場合、どれくらいの頻度でデータを取得するのだろうか。仮に1年に1度空撮を実施したとしても、日々状況が変わる観測対象に対して、データはすぐに時代遅れとなる。Doveのデータを用いれば、毎日の観測結果を照合することで日々の変化点を発見でき、飛行機やドローンより高頻度かつ安価にデータ取得ができるのだ。
飛行機やドローンに比べたDoveの優位性はアーカイブの存在も大きい。これから何かの観測を始めたいという利用者は、Doveの利用開始日を観測の Day 0 とする必要はない。いつでも、Planetが保管する過去10年にわたるDoveのアーカイブを遡って、現在までに何が変わったのか見つけられるのである。このように、他のデータと比較した際の優位性から衛星データの利活用を検討するのも一例である。

衛星データの更なる利活用のために
衛星データで何かを観測したい利用者は、衛星データが欲しいわけではなく、自身の問題を解決できるSolutionが欲しいのだ。例えば、土壌の水分含有量からその農地の収量予測をしたいというニーズがある場合、衛星の撮像画像を比較・分析した時系列変化の提供は行き過ぎたサービスとなりえる。利用者はある時点でその農地がどれだけの水分量を含んでいるのかという具体的な数値さえあれば十分なのだ。衛星データへの注目が高まる中、リモートセンシング企業のこれからの課題は、多種多様な衛星データを提供することだけではなく、利用者ニーズを満たす実用的な衛星データの提供方法を見つけることである。
Planetは衛星データをそのまま提供するのではなく、利用者ニーズを満たすSolutionを作るための研究を重ねている。Solutionを作り上げるために必要な現地現物の確認も欠かさない。取得した衛星データの価値と利用者ニーズの乖離がなくなるよう、フィールド調査によって細かな調整を実施することは、Solutionの精度を高めるだけではなく利用者から衛星データへの理解を得ることにつながるとSteve氏は語る。

世界の広がりを意識する
衛星データは、一つの企業活動や目の前のフィールドだけに注目せず、サプライチェーン全体の健全性や自身をとりまく環境全般に目を向けた行動を促進させることができる。PlanetはPublic Benefit Corporation として、世界への理解を深めるとともに地球の生命に資する取組を衛星コンステレーションで実現していく。

Planetのミッション(Planet提供)

Planetのミッション(Planet提供)

取材協力
Planet
 Regional Sales Director, Japan and India Steve Jenks氏

2022年12月23日掲載

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